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投資コンサルティング会社「FRich Quest(フリッチクエスト)」社長の森野広太
投資ファンドへの出資を装い現金をだまし取ったとして、警視庁生活経済課は9日、東京都新宿区の投資コンサルティング会社「FRich Quest(フリッチクエスト)」社長の森野広太容疑者(38)や、同社社員ら計8人を詐欺容疑で逮捕したと発表した。同課は2016年4月~22年1月ごろに全国の約3300人から約200億円を集めていたとみている。
捜査関係者らによると、同社は「1口100万円から投資可能」「毎月4%の配当が入る」などとうたって現金を集め、「(インド洋の)セーシェル諸島にある合同会社が運用している」「3割をFX(外国為替証拠金取引)、7割を安心な国債などに投資している」などと出資した会員に説明していた。しかし、実際は集めた金を別の会員の「配当」に回す「自転車操業」状態だったとみられる。社員旅行の費用や、森野容疑者の無計画な私的投資に使っていた疑いもあるという。
逮捕容疑は21年10月~22年1月ごろ、海外の資産運用会社が分散投資をしているなどと偽り、宮城県の30代男性ら4人から計5680万円を集めてだまし取ったとしている。同課は認否を明らかにしていない。
出資者のうち20~30代が6割を占めており、元手のない出資者には消費者金融や銀行から借金をさせていた。会員を呼んで毎月開いたイベントでは、お笑い芸人をゲストに呼んだり、クルーズ船を貸し切りにしたりして信用させ、さらに出資を募っていたという。
社員と会員のやりとりはメッセージを消せる匿名性の高い通信アプリ「シグナル」を使用していた。会員への配当金は手渡しでしており、証拠が残らないようにしていたとみられる。
同社は22年1月から配当の支払いを停止。会員らには「警察の捜査が入り資金も差し押さえられたため配当ができない」などと説明していた。
手元には借金だけ 返済に追われる若者
「出資金がないなら消費者金融で借りればいい。元本保証だから大丈夫」。コンサルティング会社「FRich Quest(フリッチクエスト)」(東京都新宿区)の社員はそう強調したという。その言葉を信じた多くの人が今、借金返済に追われている。
起業を目指していた東京都の無職男性(27)は2018年12月、若者が集うビジネス交流会で出会った人物を通じて同社を知った。その後、同社の関係者から出資を勧められ「配当を元手にすればビジネスの助けにもなる。これまで一度も配当が止まったことはない」と聞かされた。何度か話を聞くうちに興味が湧いた。
当時は社会人2年目で投資に回せる余裕はなかった。社員にそう伝えると、消費者金融から借り入れるよう提案された。14社を回り、計約500万円を借金することになった。
借り入れた全額を社員に預けると、なぜか約90万円を「コンサル料」と称して回収された。それまで借り入れる際の名目や金額などは、通信アプリを通じて社員から細かく指示されていたが、そのやり取りをすべて消去するよう言われた。
19年6月から毎月15万円の配当が入ったものの、すべて借金の利子などの返済に消え、利益にはならなかった。22年1月以降は配当が止まり、手元には約400万円の借金だけが残った。借金返済の不安などからうつ病になり、仕事も退職せざるを得なくなった。手元の財産はわずかで、自己破産も考えているという。
警視庁生活経済課は、詐欺容疑で逮捕した同社社長の森野広太容疑者(38)らが社員に対し、借り入れさせてでも会員から出資金を集めるように指示していたとみている。
男性は「いま思えば金融の知識がなかったのに、長年続いているビジネスだからなどと言われて信頼してしまった」と振り返る。そして「今は借金を返すので精いっぱい。だまされたお金を返すためだけに働き続けると思うと、ただただ悔しい」と言葉を絞り出した。【高井瞳】
毎日新聞 2023/2/9 10:00(最終更新 2/9 10:45) 1582文字
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