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暴排の時代に⽣き残る「新聞ゴロ」とは 今も関係断 ち切れぬ企業も
スキャンダルなどをネタに企業に揺さぶりをかけるいわゆる「新聞ゴロ」
が11⽉、警視庁組織犯罪対策3課に相次いで逮捕された。情報管理の⽢さ
につけ込み、⾦品を脅し取ろうとする「ブラックジャーナリスト」の存在が
改めて浮き彫りになる⼀⽅、彼らが発⾏する情報誌・機関誌を購読し続ける
企業側の実態も明らかになった。平成9年の総会屋利益供与事件を機に、経
済界から反社会的勢⼒を排除する機運が⾼まる中、企業と反社勢⼒の間で今
も繰り広げられる攻防の最新事情とは…。(太⽥明広、五⼗嵐⼀)
■社外秘のマニュアル流出 「買い取り」は⾔明せず
東京都⼼で最⾼気温36・8度を記録し、18⽇ぶりの猛暑⽇となった8⽉30⽇の昼下がり。JR
池袋駅(豊島区)から徒歩約10分のビル1階に⼊居する飲⾷チェーン運営会社「三光マーケティング
フーズ」に、男3⼈がアポなしで訪ねてきた。
三光マーケティングフーズは東証2部上場で、居酒屋「東⽅⾒聞録」や焼き⽜丼店「東京チカラめ
し」などをチェーン展開する。
男らは応接室に通されるやいなや封筒から書類を取り出し、⽬の前に座る30代の社員らに⽰した。
それは、別の社員4⼈分の雇⽤契約書と社外秘の研修マニュアルだった。⼾惑う社員らに、男らはすご
みを利かせながら⽮継ぎ早に⾔葉を発した。
「こんなものが漏れている。個⼈情報の管理がずさんだ。産業廃棄物法違反になるぞ」
「⾃分はジャーナリストだから、売ることも売らないこともできる。裏の⼈間も知っている。処理し
ないなら裏のルートに流す」
⾔下に書類を買い取るように求められたと悟った社員が要求額を尋ねる
と、「そちらが考えることで、こちらが考えるものではない」と具体的な額
については⾔及を避ける。その上で、「社⻑を呼んでくれ。専務でもいい。
連絡取って決めろ」とダメを押し、⽴ち去った。
その後も、男らは会社に雇⽤契約書をFAXで送り付けるなどの嫌がらせ
を繰り返した。さらに、4⼈とは別の⼥性アルバイトに「あなたの個⼈情報
が書かれた雇⽤契約書が捨てられていた。訴えるなら協⼒しますよ」と電話
してきたという。
三光マーケティングフーズは⾦銭の⽀払いには応じず、警視庁に被害を相談。組織犯罪対策3課は今
⽉13⽇、恐喝未遂容疑で、埼⽟県川⼝市並⽊、出版関連会社「報道ジャーナル」代表、福永洋容疑者
(67)ら男3⼈を逮捕した。
■⾃称「平成の仕置き⼈」 企業側に管理の⽢さも
新聞ゴロ-。福永容疑者のように、新聞、雑誌などの報道機関の公共性を盾に、企業の経営内容や役
員の不正などの情報を悪⽤し、⾦品を要求する⼈々は業界⽤語でこう呼ばれる。警察庁によると、新聞
ゴロを含む「会社ゴロ」は平成15年以降、1000⼈前後のほぼ横ばい状態で推移し、24年は97
0⼈が確認された。
福永容疑者はインターネット上のブログでは「平成の仕置き⼈」を名乗り、「あなたに代わって恨み
を晴らします」と呼びかけ、企業の内部情報を集めようとしていた。
三光マーケティングフーズを訪れた後の9⽉6⽇には、「マンションのごみ箱から社外秘の資料など
を発⾒したが、回収に努める気配がまるでないようだ」と訴えている。
交渉の場で具体的な要求⾦額を出さなかったのは、「恐喝だと⾔われない
ためのプロの⼿⼝」(捜査関係者)。実際、暴⼒団に近い関係者が同席して
いたとされる。ただ、新聞ゴロに詳しい関係者は、福永容疑者や報道ジャー
ナルについて「全く聞いたことがない」と打ち明ける。
福永容疑者らが持っていた雇⽤契約書は毎年作成されており、社員側に渡
していた控えが流出したとみられる。社外秘のマニュアルも古いものは裁断
せずに破棄していたといい、三光マーケティングフーズ側にも管理の⽢さが
あった。組対3課は⼊⼿経路を調べる。
捜査関係者は「新聞ゴロに少しでも隙を⾒せるとつけ込まれるので、普段から⾃衛⼿段を講じてほし
い」と警告。三光マーケティングフーズは「書類を厳重に管理するように周知徹底し、再発を防⽌す
る」としている。
■記事コピーで2万円 「広報部」と付き合い?
11⽉9⽇には、著作権法違反容疑で、30年にわたって機関誌「⽉刊対話」を発⾏する寺⽥亘利容
疑者(77)=神奈川県⼆宮町百合が丘=ら男⼥2⼈が組対3課に逮捕された。逮捕容疑は新聞記事を
コピーし、無断で機関誌に掲載していたというものだ。
⽉刊対話はB5版20ページの冊⼦で、購読料は6カ⽉で2万1000円。その内容は最近の事件・
事故から政治・経済まで多岐にわたっているが、複数の新聞社の記事を無断でそのまま掲載するだけの
お粗末なものだった。
業界関係者によると、新聞ゴロによる情報誌・機関誌の発⾏は昭和50年代前半が全盛で、約100
0誌ほど購読していた企業もあった。寺⽥容疑者も株を取得した上場企業の弱みを握ったように振る舞
い、⽉刊対話の購読や⾼額な広告料を要求するなどしていたとされる。
ただ、56年に商法改正で総会屋排除のため株主への利益供与が禁⽌され
たのを機に、情報誌や機関紙は激減。さらに、平成9年の総会屋への利益供
与事件などを受け、利益供与罪の罰則強化と利益要求罪が新設されたこと
で、企業側は反社勢⼒との関係解消に⾛った。
それでも、寺⽥容疑者は組対3課が確認できた17年以降、東証1部上場
企業を含む延べ179社から、約4400万円の購読料を受け取っていた。
今年1〜9⽉に上場企業を含む約35社が購読し、約190万円を⽀払って
いたことも確認されたという。
なぜ、寺⽥容疑者には“客”がついたのか。業界関係者は「暴⼒団や総会屋の窓⼝だった総務部⾨は関
係を断ち切ったが、広報部⾨では徹底されていなかった」と指摘。寺⽥容疑者は30年以上前に⼤⼿広
告代理店で働いており、「多くの企業の広報部と付き合いがあったのではないか」(業界関係者)とい
う。
寺⽥容疑者が「新聞ゴロ」であることを認識した上で購⼊していた企業もあり、担当者は組対3課に
「前任者からの申し送りで購⼊していた」と説明しているという。捜査幹部はこう⾔って警鐘を鳴ら
す。
「暴⼒団排除条例も浸透し、社会全体で反社勢⼒を排除するという機運が⾼まっている。企業側は前
例にとらわれず、毅然とした態度で、いかがわしい相⼿との付き合いを断ち切ってもらいたい」
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