Views: 65432
「正圓寺」乗っ取り、新たな不動産会社代表の男を詐欺容疑などで逮捕
出典:「正圓寺」乗っ取り、新たな不動産会社代表の男を詐欺容疑などで逮捕…複数のルートで寺を「食い物」にしたか : 読売新聞
吉田兼好ゆかりの 古刹こさつ 「 正圓寺しょうえんじ 」(大阪市阿倍野区)の乗っ取り事件に絡み、大阪府警は4日、寺を運営する宗教法人の代表役員に不正に就任したなどとして、新たに不動産会社代表の男を有印私文書偽造や詐欺などの容疑で逮捕した。一連の事件での逮捕者は4人目。男はこれまでに逮捕された不動産業者らとは別に乗っ取りを図った疑いがあり、府警は、同寺が複数のルートで食い物にされていた可能性があるとみて調べる。
正圓寺の境内(大阪市阿倍野区)
捜査関係者によると、男は大阪市西区の不動産会社「日本フォーラム」代表、平岡 弘聖こうしょう 容疑者(54)(大阪市阿倍野区)。平岡容疑者は、宗教法人「正圓寺」の代表役員だった元住職の辻見 覚彦かくげん 被告(56)(電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪で起訴)の名義を無断で利用。9月11日、偽造した総代会議事録などを大阪法務局に提出し、代表役員が自身に変更されたとするうその内容の登記をした疑い。
[PR]
また、平岡容疑者は21年3~9月、寺側に金を貸したとする虚偽の公正証書を同法務局に提出するなどし、関係者が寺の銀行口座に預けていた約2200万円を詐取した疑いもある。府警は4日、平岡容疑者と共謀したとして、辻見被告も詐欺容疑などで再逮捕した。
寺は元々、境内の土地約1万平方メートルと、隣接する宅地約1100平方メートルを所有していた。あべのハルカスの南約1・5キロにあり、不動産価値は20億円近いとされる。辻見被告は境内に特別養護老人ホームを建設する計画を進めていたが、18年に資金難で頓挫。多額の負債を抱え込んだ。
その後、辻見被告は別の不動産会社代表の西村浩(57)、会社役員の南野潤二(55)両被告(電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪で起訴)らに促され、差し押さえを免れる目的で、20年11月までに全ての土地や建物の所有権を売買などを通じて第三者に変更した。
辻見被告は19年末に平岡容疑者と知り合い、第三者に移った不動産を取り戻すために協力を要請していた。平岡容疑者は今年9月、辻見被告に代わって宗教法人の代表役員となった。不動産を寺に戻して売却するなどし、利益を得る狙いだった可能性もあるとみられる。平岡容疑者は10月、読売新聞の取材に対し、「(辻見被告と)事前に意思確認をしていた。寺を残すためだった」と話していた。
吉田兼好ゆかりの古刹「正圓寺」乗っ取り事件 “寺の代表”になりすましたか… 虚偽登記の疑いで新たに男が逮捕 住職を含め逮捕者はあわせて4人に2023年12月08日
大阪市阿倍野区の寺を舞台に住職らが逮捕・起訴された乗っ取り事件で新展開です。
虚偽の登記で、寺を運営する宗教法人の代表役員になりすましたなどとして、新たに男が逮捕されました。乗っ取り事件の真実に迫ります。
■虚偽登記で逮捕された男 同時に住職は4度目の逮捕
Q.加尻さん、住職が3度に渡り逮捕されたと思いますが、どう受け止めていますか?
【平岡弘聖(こうしょう)容疑者】「今、掃除中なんで…」
11月、関西テレビの取材に対し、フードをかぶって顔を隠そうとした男。加尻こと平岡弘聖容疑者(54歳)です。
大阪市阿倍野区にある正圓寺(しょうえんじ)を運営する宗教法人の現在の代表と登記されていますが、12月4日に逮捕されました。
警察によると今年9月、平岡容疑者は宗教法人「正圓寺」の代表役員ではないにも関わらず、自分が代表役員であるとなりすまし、虚偽の登記をしたなどの疑いがもたれています。
逮捕前、平岡容疑者は取材に対し、次のように答えていました。
Q.虚偽登記で代表役員になっていませんか?
【平岡容疑者】「なってないですよ」
Q.虚偽登記ではないんですか?
【平岡容疑者】「違いますよ」
Q.代表役員になって何がしたかったんですか?
【平岡容疑者】「何がしたいとかではないですよ。する人がいなかった。するしかなかっただけの話」
警察の調べに対しても、「正当な手続きで就任したもので、何ら不正行為はありません」と容疑を否認しています。
そして、正圓寺の住職・辻見覚彦(かくげん)容疑者(56歳)も12月4日、平岡容疑者と共に詐欺などの疑いで再逮捕されました。辻見容疑者の逮捕はこれで4度目です。
ようやく全貌が見えてきた、数十億円ともいわれる寺の土地を狙った乗っ取りの実態とは。
■吉田兼好ゆかりの由緒ある寺が“乗っ取り”の危機に
随筆「徒然草」を書いた吉田兼好ゆかりの古刹、正圓寺。平安時代に創建されたと伝えられ、“天下茶屋の聖天さん”として親しまれてきましたが、乗っ取りの危機にひんしていました。
今年10月、住職・辻見覚彦容疑者が寺の土地の一部の所有権について虚偽の登記をした疑いで、会社役員らと共に逮捕されました。
Q.虚偽の(登記)申請をしたことになりませんか?
【辻見容疑者】「それはちょっとお答えすることができません」
その後、共に逮捕された不動産会社代表の西村浩被告(57歳)が、虚偽登記された土地を勝手に売却した疑いで再逮捕されました。
売却益の1憶1000万円は寺に一銭も入っていません。しかし、それで終わりませんでした。
そもそも事の発端について見ていきます。
約8年前、辻見容疑者が12億円あまりで建設を計画した“特別養護老人ホーム”。傾きかけた寺を立て直そうと手を出したものの、辻見容疑者のずさんな手続きによって、国からの補助金が取りやめに。金融機関からの融資も止まり、計画が頓挫しました。
多額の債務を抱え、寺の土地が建設会社に差し押さえられるのを免れようと、西村被告と南野被告が持ちかけた虚偽登記の誘いに乗ったものの、差し押さえを免れるどころか、寺の土地の一部を失う結果になったのです。
これを皮切りに境内の土地や本堂といった建物など、目ぼしい資産の所有権は実業家の男性の手に渡ってしまいました。
そんな正圓寺に近づき、4年前から立て直しを図る名目で寺の運営に関わり始めたのが、会社役員の平岡容疑者でした。
当時の状況について、長年にわたり正圓寺の運営に携わってきた関係者は、こう証言しました。
【宗恵院 住職】「相当、辻見さんも困っているのは、内容を聞かずとも分かるぐらい。はじめは(平岡容疑者に)悪い印象はなかったんですね。辻見さんを手助けしてくれる優しい人だなという感じで捉えていました」
救世主のようにも見えた平岡容疑者。しかし、辻見容疑者の信頼を得て寺の運営を任されるようになると、徐々に態度が変わっていったといいます。
Q.当時の印象と現在の印象は変わりないですか?
【宗恵院 住職】「いや、変わりましたね。はじめの方は辻見さんを助けるためにという感じでいろいろ手伝ってくれたんですけど、ここ数カ月の間は“辻見さんを追い出したい”、“あの人は僧侶じゃない”という感じで言ってきたので、僕らはちょっとおかしいなという感じで見ていました」
本当の狙いは何だったのでしょうか。
■住職の逮捕後に行われた“ある交渉”
宗教法人の代表になりすました平岡容疑者は、辻見容疑者が逮捕された後に、ある交渉を行っていました。その音声データが残されています。それは、宗教法人を食い物にするブローカーとみられる男、A氏とのやりとりです。
【平岡容疑者】「普段は1日と16日は護摩行、御不動さんの。あとは御朱印と月参りが4~5件くらいですよね」
【A氏】「これで収益はどれくらい取れているんですか?」
【平岡容疑者】「いや、収益なんかはほぼないですね」
寺の収益の状況の話から一転、土地売買の話へ。
【A氏】「僕のお寺で(土地などを)買うなりしちゃだめですか?」
【平岡容疑者】「まぁいいですよ。今すぐですか?ゆくゆく?」
【A氏】「こうなってくると土地の評価額になってくるんですよ。宗教法人がついていても、ぶっちゃけ、土地の評価額の金額になってくるので、それをうちの寺で買うか…」
【平岡容疑者】「トータルでなんぼいくんですか?」
【A氏】「分からないです。僕らも計ってないので」
【平岡容疑者】「路線価でいうと全部で30億円ぐらい」
【A氏】「(購入は)お寺というか、僕個人の名義で」
【平岡容疑者】「宗教法人で買ってもらう方が見栄えはいいかな」
【A氏】「それは宗教法人で買いましょう」
なんと、平岡容疑者が正圓寺の土地を30億円で売ろうとする交渉でした。
境内や本堂など、全ての土地と建物の所有権は実業家の男性などにありますが、正圓寺側が「だまし取られた」と主張して返還を求める裁判を提起。平岡容疑者は寺の土地などを取り戻せたら、売却して巨額の利益を得ようとしていたとみられています。
宗教法人の代表になりすましたのは、本当に寺を救うためだったのか、私利私欲のためだったのか…。
Q.代表役員になれば不動産処分も容易にできてしまうのですか?
【宗恵院 住職】「(宗派に属さない)単立であれば容易にできます。代表役員のはんこを押せば、全てが収まります。宗教法人・正圓寺を自分のためだけに使うのではないかと思っています」
平岡容疑者は、疑惑に何と答えるのでしょうか。
Q.虚偽の登記をしてまで代表役員になった理由は何ですか?
【平岡容疑者】「…」
Q.民事で寺の土地を取り戻したら、それを売ろうとしているのではないですか?
【平岡容疑者】「全くないですね。何を言っているんですか。代表役員になんかなりたくなかったんです。そういう事情も全て皆さん知っていますよ」
平岡容疑者は吐き捨てるように疑惑を否定しました。
寺の窮状に付け込む乗っ取り事件。合わせて4人が逮捕されましたが、今、正圓寺は住職不在で財産は散逸。立て直しは容易ではありません。
正圓寺の檀家の女性は、ある不安を募らせています。
【檀家】「うちもお墓があるんですけど、それは引き払おうかどうしようかという話はチラッと出ました。そのお墓を引き上げるにしてもお話できる方があちらにいらっしゃらないので、勝手にどうこうというのも嫌ですし。いろんなことを思っても何一つ動けないという状況ですね」
正圓寺ゆかりの兼好法師が残した「徒然草」の最終章243段は、息子に「仏様とはどんなもの?」と聞かれた父が答えに窮したエピソードです。もし今の正圓寺の窮状を兼好法師が見たら、どのように書きつづるのでしょうか。
(関西テレビ「newsランナー」 2023年12月4日放送)
この記事をシェアする
返信する