警視庁の侮辱罪立件の顛末
 
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警視庁の侮辱罪立件の顛末


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山本 和樹

 

2021/04/28 06:10

 SNS上で度重なる誹謗中傷を受けたプロレスラーの木村花さんが、22歳で自らの命を絶ってから間もなく1年となる。木村さんは死の直前、「毎日100件近く率直な意見。傷ついたのは否定できなかった」とツイッターに綴っていた。しかし、警察は悪質な書き込みをした犯人を2人しか立件できておらず、「ネットいじめ」を巡る捜査の限界が浮き彫りになった。その背景には警察を阻む“2つの壁”があった。

 2020年5月23日、木村さんは東京都内の自宅マンションで変わり果てた姿で見つかった。木村さんはプロレスラーとして活躍する傍ら、フジテレビの恋愛リアリティーショー「テラスハウス」に出演していた。番組は男女6人によるシェアハウス生活を記録するという仕立てで人気を集めていたが、“事件”は20年3月31日に起きた。

木村花さん ©時事通信社© 文春オンライン 木村花さん ©時事通信社

 プロレスのコスチュームを誤って洗濯した共演者の男性に木村さんが激高する放送回が、動画配信サービスNetflixで先行配信されると、その直後から、SNS上に「死ね」「気持ち悪い」「消えろ」といった匿名の書き込みが相次いだのだ。

殺人などの凶悪犯罪を扱う「捜査一課」が動いた理由

「テラスハウス」は海外でも人気の番組だったため、木村さん急逝のニュースは瞬く間に世界を駆け巡った。SNS上では「ネットいじめ」を非難する投稿が拡散。政府や与野党がすぐに誹謗中傷対策に乗り出すほどの社会的ムーブメントに発展した。そんな中、「いずれ刑事事件になる」と想定して密かに動き出したのが警視庁捜査一課だった。

 警視庁の中でも、殺人などの凶悪犯罪を扱う捜査一課がなぜ入ったのか。捜査関係者が解説する。

「一課の中にはネットを悪用した脅迫事件などを専門とする部署があり、通称『ハイテク係』と呼ばれている。去年だと、電通や全国の大学などに届いたネット上の連続爆破予告も担当した“職人集団”だ。木村さんの死後、『まずい』と思った人たちが一斉にツイッターの書き込みを消去し始めていた。誹謗中傷事件を立件するためには遺族からの告訴がないといけないが、告訴を待っていては、その間に証拠がどんどん消されてしまう。将来的に遺族が告訴してくれると信じ、ハイテク係に急いでツイッターを解析させることになった」

 ハイテク係が一定の期間内なら過去の書き込みも遡って見ることができる特殊なソフトを使ったところ、番組が配信された3月末から自死までの約2カ月の間に、木村さんのツイッターアカウントには600以上のアカウントから1200件近いメッセージが寄せられていた。このうち、捜査一課は約200アカウントによる約300件の書き込みが誹謗中傷に当たると判断した。

米Twitter社は「そんな微罪で情報は明かせない」と開示を拒否

 しかし、ここで“1つ目の壁”に阻まれることになる。捜査一課は名誉毀損罪(3年以下の懲役など)での立件を考えていたが、条件を満たす書き込みが見つからなかったのだ。ある捜査員は、

「名誉毀損罪が成立するためには、ウソでもホントでもいいから『部長は部下にセクハラをしている』といったような具体性のある書き込みが必要になる。でも、木村さんに対しては『死ね』や『気持ち悪い』といった抽象的な書き込みばかりだった。誰もがちょっとした感情を気軽につぶやくSNS時代らしい現象ではあるのだが……」

 とため息を漏らす。

 捜査一課に残された道は、刑法の中で最も罪が軽い「侮辱罪」(1万円未満の科料など)での書類送検しかなくなった。その方向で捜査を進めると、次は“2つ目の壁”にぶち当たってしまった。匿名の書き込みをどこの誰がしたのか特定するため、米ツイッター社に投稿者の情報を開示するよう問い合わせたものの、応じてもらえなかったのだ。

「アメリカにはこちらの侮辱罪に相当する概念がないらしく、しかも、そんな微罪で利用者の情報を明かせないと、非協力的なスタンスだった。捜査は完全に行き詰まってしまった」(捜査関係者)

「誹謗中傷のない世界にしたい」遺族の苦渋の選択

 木村さんが亡くなってから7カ月近くたった2020年12月17日、捜査一課は「性格悪いし、生きてる価値あるのかね」「ねえねえ。いつ死ぬの?」と書き込んだ大阪府の20代男を書類送検した。実を言えば、この男は捜査一課が自力で突き止めた人物ではない。木村さんの自死から1カ月後、遺族に自ら名乗り出て謝ってきたため、“幸運にも”身元が判明していたのだ。

 遺族は当初、この男を許したため捜査一課も立件できないと考えていた。しかし、捜査一課では、他の容疑者を割り出せなかった以上、これまでの捜査が水の泡になりかねない状況に追い込まれていた。捜査一課と遺族が話し合った結果、遺族は「苦渋の選択だが、世間に公表して知ってもらい、誹謗中傷のない世界にしたい」との思いで告訴するに至ったという。

 今年4月5日には、「死ねや、くそが」「きもい」「かす」と投稿した福井県の30代男を書類送検した。この男を割り出せたのは、遺族がアメリカの裁判所の証拠開示制度「ディスカバリー」を使って今年3月に個人情報を何とかツイッター社に開示させ、捜査一課に提供していたという経緯があったからだった。

 書類送検された2人の男に対する刑罰は3、4月にそれぞれ決まったが、いずれも9000円の科料にとどまった。木村さんが亡くなってから間もなく1年。侮辱罪の時効も1年しかなく、ここから新たな容疑者を掘り起こすのは難しいとみられ 、多くの“逃げ得”を許してしまう。

「SNSの誹謗中傷は最悪の結果を招くかもしれないのに、立件できない、できても罪が軽いとなれば抑止効果は薄い」

 捜査員たちは悔しさをかみしめている。

(山本 和樹/Webオリジナル(特集班))

引用元:🔗週刊文春

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