社会問題

今野智博 弁護士法違反裁判初公判!「名義貸した覚えはない」と無罪を主張?

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konno tomohiro

 

 自身の弁護士名義を無資格者に貸して法律事務をさせる非弁行為をさせた弁護士法違反の罪に問われた元衆議院議員の今野智浩被告の初公判が2024年11月28日、東京地裁531号法定で開かれた。

 驚くべきことに、今野智博被告はこの裁判で無罪を主張した。

 起訴状によるとこの事件は次の通り。

昨年12月~今年1月にかけ、弁護士資格を持たない辻、松井らに違法な名義貸しを行い、架空詐欺事件の被害金の回収の委任契約、法律事務を行わせ、報酬を得た弁護士法違反

というものだ。

この事件では10人逮捕されていて、そのうち主犯格にあたる松井宏と辻直哉は皆、罪を認めている。

今野智博被告に至っては、違法収益洗浄で追起訴までされている。

 そうした中で、今野智博被告が無罪を主張したというのは驚きだった。

 今野智博被告の主張は、「辻、松井、湊に法律事務はさせておらず、また自分の弁護士の名義も利用させていない。というものだ。

これに関して、裁判官が今野智博被告に対して「電子契約委任で弁護士の電子印を利用していたのは、事実でないのか?」と質問すると、今野智博被告は「事務員に指示し、使用していた。」と答え、弁護士は次のように補足した。

「起訴状には、電子システムを利用した委任契約を締結したとあるが、これは事務員に指示して事務員が使用したにすぎず、委任契約は依頼者と松井間で行われており、共犯である辻、松井が契約の主体を行った事実はありません。
よって共犯者(辻、松井)の実態がないため、弁護士法違反は成立せず、被告人は無罪です。」

と主張だ。

 先の松井や辻の裁判ではすでに今野智博被告と非弁行為をすることの話し合いと合意が行われていたことが確認されているし、また名義貸しの対価となる報酬も受け取っていたとなれば、その報酬をどう説明するのであろうか。

 かなり苦しい主張のように思えたが、自身が弁護士であるから、それ相応の根拠があるのだろう。

検察側の冒頭陳述

続いて、検察側の冒頭陳述が述べられた。その内容は次の通り。

 今回の非弁行為の主犯格である辻直哉と今野智博被告が知り合ったのは令和5年4月。そして5月にあらためて湊和徳が今野智博被告を辻直哉に紹介したと言う。

そこで今野智博被告、辻直哉、湊和徳、そして松井宏の4人で弁護士法人を設立する。

 当初は「今野法律事務所」を支店化する予定であったものの、弁護士が見つることができないまま、令和5年8月に開所する。

 事務所が開設された新橋グリーンビル8階は、今野智博被告名義で借りていたが、今野智博被告は埼玉の今野法律事務所にいて、新橋の事務所には常駐していなかった上に、新橋の事務所の事務員の採用にも関わっていなかったということから、新橋の事務所への関与がほとんどなかったことがうかがえる。

 その新橋の事務所での売上の分配は、今野智博被告が10%を取っていたと言う。そして、湊指定の口座には経費等引いた内、6%前後、辻は売上の5%、松井はアークスの給料として230万+売上の2~5%を湊から受け取っていた。

令和5年9月2日にインターネット上にフリーダイヤル、「FX、マッチング詐欺、詐欺被害は弁護士へ依頼し返還請求可能」などの広告を打ち、今野法律事務所名でLINEアカウントを作り自動応答システムで対応していた。

新橋の事務所の事務員の間では、効率的に相談者から契約をとるためのノウハウをまとめたマニュアルが共有されていたと言う。また、着手金の合計を売上に見立て、営業成績表を作成。

 こうしたことから、新橋の事務所は被害者から着手金を詐取することが目的だったことが伺われる。

 松井らは今野智博被告になりすまし依頼者に電話をかけており、それを「先生電話」と呼んでいた。

被害者からの依頼キャンセルや着手金返還などといった例外的な対応は今野智博被告が行っていた。

こうしたことから、役割分担も明確に決められていて、今野智博被告は新橋の事務所のスタッフと綿密に連携していたことが伺われる。

 今野智博被告は、令和5年11月に業務を処理しきれないと判断し、12月に「年明けからネット広告を取りやめたい」と湊和徳に進言したものの、令和6年2月頃までネット広告は掲載されていたという。

 つまり少なくとも令和6年1月まで非弁活動を行い、今野はそれらで得た利益の10%を報酬として得ており、着手金総額は4億9000万にのぼる。

 この非弁行為が発覚したのは、別件の特殊詐欺で警察が捜査中、新橋のビルに関係者が出入りするのを発見し、捜査したところ、弁護士法違反があり逮捕に至ったと言ったものだ。

green buliding
新橋グリーンビル

弁護側の意見陳述

これに対して、弁護士側の意見陳述が述べられた。パワーポイントを使用しながらの陳述で、全力で無罪を勝ち取ろうとしに来ていることが伺われる。

冒頭では弁護士から次のように述べられた。

元衆議院議員である今野は寝る間も惜しんで弁護士活動している中、名義貸しで起訴されたが、名義貸しした事実はないという。

 自ら法律事務を行い、事務スタッフは補助的業務のみしかかからわせていないと主張。

 また詐欺被害者の被害金8,000万円(直接被害者に振込まれる分も含めたら約1億)の取り戻しに成功したと主張する。

 弁護士法違反はしていなかったにも関わらず、検察は強引に検挙に踏み切ったとの主張だ。

事件の背景について

続いて、弁護士は今野智博被告の背景を次のように説明した。

 今野智博被告は経済的に困っておらず、このような着手金で儲ける必要がなかったが、弁護士として17年のキャリアを積んだ中で、昨今のロマンス詐欺などの被害状況をみて、こうした世の中の状況が心に引っかかっていたと言う。

 そんな折に、仕事で関わりのあった辻直哉から湊和徳を紹介してもらい、次のようなことを聞いたと言う。
「ロマンス詐欺、投資詐欺、副業詐欺にあった被害者は警察に相談しても「取り返せない」と言われ、弁護士に相談しても「無理、あきらめなさい」と言われる状況。」「湊和徳の知る詐欺被害に取り組む弁護士は6割回収している」「ネット広告を出せば困っている被害者へアウトリーチできるのではないか、被害者を助けられる、被害者が先生を待っている」

こうしたことを聞かされ、「人のためになることができるなら」と今野智博被告は詐欺被害金回収を決意し、弁護士法人化など詐欺被害救済に向けた体制作りを開始したという。

今野智博被告の受任体制

・当初の想定では月に20件から30件程度の相談を受け、平均単価30万として、月間1,000万程度の売上を想定し、そこから経費を除いて手元に100万が残るというものだった。

埼玉の事務所を法人化し、新橋に支店を設立したが、新橋の事務所で内定を出した弁護士がいたものの、予想外に辞退されたという。 

 そこで相談者の聞き取り内容や進捗が、オンラインで把握可能なシステム(Lステップ)を導入し、LINEによる自動応答で相談者からの聞き取りを行っていたと言う。

今野智博被告が指示した内容

 今野智博被告が、インターネット広告の掲載依頼を新橋の事務所スタッフに指示していたという。

 また、Lステップの入力、定型的な委任契約書、書類作成を事務スタッフに指示し、個別の対応が必要な場合や、弁護士会照会、返還請求などは全て今野智博被告が自らが対応していたという。

 依頼者からの着手金は今野名義の預り金に振込まれ、入出金管理はすべて今野智博被告が自身で対応し、事務スタッフは全て今野智博被告の指示に基づいて対応行っていたと説明していた。

弁護士法違反について

 名義貸しの対価が発生していた場合、弁護士法違反が成立するものの、今野智博被告の場合は、そうした事実はなかったと言う。

 なぜならば、今野智博被告は実際に業務を行っている事実があるために、名義貸しとはいえない、というものだ。

 つまり、今野智博被告に弁護士法違反を問うのであれば、今野智博被告が事案処理を行った実態がないことを立証する必要があるという。

 また、委任契約は今野智博被告が顧客と直接締結していたので、これは弁護士法違反ではなく、無実を主張すると言う。

雑感

 共犯者として逮捕された辻直哉、松井宏、湊和徳らは、今野智博被告から名義を借りて法律業務をしていたことを認めている。

 また法律業務を行っていたことも認めているし、売上に応じた分配を受け取っていたとなれば、今野智博被告が名義を貸していない、貸したつもりはないというのは通用しないのではないか。

 しかしながら今野智博被告は、法律の解釈に踏み込むことで、無罪を勝ち取ろうとしているのではないかと思われる。

 いずれにせよ、詐欺被害にあった被害者たちをさらに騙して着手金をだまし取る非常に悪質な犯罪である上に、さらにその被害者数はわかっているだけでも900人、その被害額は少なくとも5億円にものぼるという規模で、弁護士の社会的信用を貶めた罪は計り知れない。

 この被害に応じた相応の罰が加害者たちに下ることを望まずにはいられない。

 

国際新聞編集部

ただただ謙虚な姿勢でありのままのことをありのままに伝えることこそ、 ジャーナリズムの本来のあるべき姿。 それを自覚はしているものの、記者も血の通った人間。 時にはやり場のない怒りに震えながら、 時には冷酷な現実に涙しながら、取材をし、 全ての記事に我々の命を吹き込んだ新聞を作っています。

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